2018年06月10日
タイの首都バンコクに一風変わった博物館がある。その名も「国立汚職博物館」。首相府脇の一等地のビルに入居する。不正撲滅のため、現在の軍政に移行後の2015年に開館した。
館内は10のエリアに分かれ、タイで連綿と続く汚職の歴史がつづられている。06年の軍事クーデターで失脚したタクシン元首相の不正が大きく取り上げられ、いささか政治臭が漂う。
「警察官に交通違反切符を切られたら?」「子どもを有名校に入れたい時は?」。来場者に対処法を問うエリアもあった。
知り合いのタイ人は「警察官に100バーツ(約340円)払って違反を見逃してもらった経験がある」と明かす。有名校への裏口入学の話も耳にするという。
同館はこうした身近な「袖の下」から意識を変えるのが狙いだが、オープンから3年、効果はいかほどか。
昨年末以来、軍政ナンバー2の副首相に日本円換算で1億円以上の隠し財産疑惑が浮上。国家警察の前長官が風俗店経営者から多額借金とのニュースも。
庶民からは「上がこれでは」との声が漏れてきそうだ。私が訪れた日、博物館は閑散としていた。 (北川成史)