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中国・大連 後味悪かった肉まん

2018年07月10日

 拘束されて約2時間たった午後1時ごろ、警察官が「おごってやる」と近くの食堂に案内してくれた。豚肉と白菜、シラタキなどの具がたっぷりの肉まんは、こんな状況でも食欲をそそる。水っぽいおかゆもキュウリの漬物とすすると悪くない。しめて9元(約150円)。

 そのころ習近平(しゅうきんぺい)中国国家主席と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長も、同じ大連市内で昼食を終えていたのだろうか。

 中国初の国産空母を間近にのぞむ大連港の一角でのこと。「ああ、あいつだ」という様子で近づいてきた警察官3人に「車に乗れ」と言われた。立ち入り制限はない。その時は写真も撮っていない。抗議は聞き入れられず、警察署に連行されパスポートと記者証を取り上げられた。

 だが、その後はソファに座っているだけ。詳しい事情聴取はなく、カメラや携帯も調べられなかった。午後3時半すぎに突然、解放された。このとき正恩氏はすでに帰途についていた。

 外国人記者に取材させないために拘束したのだろうか。尾行か、監視カメラか、なぜ記者だと分かったのかは不明だ。肉まんはうまかったが、後味の悪さが残った。 (中沢穣)