2018年07月13日
氷河というものを初めて間近で見た。降り積もった雪が長い年月をかけて氷となり、うっすら青みを帯びる。その巨大な塊が重力によって少しずつ動く。
休暇で訪れたアイスランドの世界最大級の氷河バトナヨークトル。現地生まれのガイド、ビンニさん(37)は、巨大なタイヤの四輪駆動車で氷河を豪快によじ登り、氷河の上を散策できる所まで案内してくれた。
氷河トレッキングはアイスランドの観光名物で、年中、世界各地から多くの人を引きつけている。ただ、氷河は温暖化の影響で急速に解け始め、200~300年後には消えてなくなると推定されているという。
昨年、同国には人口約33万人の6倍近い200万人の観光客が訪れた。「国の経済には良いこと。でも、自然が損なわれているのが心配」とビンニさんは渋い表情を浮かべた。
私を含め、世界の観光客が飛行機で、車で大量の化石燃料を消費しながら氷河を目指す。そうした行為がガイドの糧につながる一方、肝心の観光資源そのものが目減りしてゆく矛盾。
物言わぬ氷の塊は、人間の営為をじっと見つめているように思われた。 (垣見洋樹)