2018年07月29日
空港から約10キロ離れた市内にタクシーで向かう間、片側4車線の道路が延々続く。4月、ミャンマーのネピドーを仕事で訪れた。軍政時代の2006年、ヤンゴンに代わり、突然首都になった人工都市だ。
対向車や並走車はほぼ皆無。道路脇にいるのは、草をはむ農業用の牛ぐらい。「世界一異様な首都」と揶揄(やゆ)する人がいるのもうなずける。
極めて評判が悪い町だが、やたらと広い道路を眺めているうち、ランニングが趣味の私はふと、思い付いた。「これってマラソンに最適?」
翌日、早起きして、ホテル周辺を走った。日中は軽く30度を超えるが、早朝は20度前後で、カラッとしている。
走ると街の巨大さが身に染みる。建物同士が500メートルほど離れている。道路の両側は地肌むき出しの切り立った崖。荒れ地を開いた痕跡だ。思わぬ難敵はあちこちにある牛の「落とし物」。避けるのに一苦労した。
30分走って、歩行者には全く出会わなかった。道だけは立派なのだが、砂漠に1人いるようなせつなさを感じる。誰のために造った町なのか。爽快感よりも、疑問が一層膨らんだ。 (北川成史)