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韓国・坡州 分断の最前線は語る

2018年07月31日

 舗装道路から数10メートル踏み出せば、希少な動植物が繁殖する自然の宝庫であり、多数の地雷が埋まった危険地帯でもある。韓国北西部・坡州(パジュ)市の非武装地帯(DMZ)にある都羅(トラ)展望台周辺は、南北対話が急速に進む現在も緊張感が漂っていた。

 朝鮮戦争の休戦ラインの南2キロにあるこの展望台は、4、5月の南北首脳会談の舞台となった板門店(パンムンジョム)、2年前から稼働が停止している開城(ケソン)工業団地、北朝鮮の「宣伝村」が一望できる観光名所だ。

 ただ、周囲には、戦争時に埋設され探知が困難なプラスチック製地雷が残っており、半世紀以上、人の手がほとんど入っていないという。

 付近にはさらに、北朝鮮が奇襲攻撃のため秘密裏に掘り進めた地下トンネルも現存する。わずか数100メートルを歩いただけでも暗く狭く、湿っていて息苦しい。発見した韓国兵は肝を冷やしただろうが、掘削した北朝鮮兵も命懸けだったはずだ。

 南北首脳は相互敵対行為の中断や年内の終戦宣言を約束し、韓国内は南北融和に楽観的な雰囲気。だが、分断の現場は決して簡単ではないと告げているように感じた。 (上野実輝彦)