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ニューヨーク 露骨なのはちょっと

2018年08月10日

 住まいのアパートに大量のアリが侵入したと家族から電話があり、仕事帰りにニューヨークのホームセンターに寄った。防虫剤から殺虫剤まで害虫対策の商品が並ぶ陳列棚を仰ぎ見て、思わず身震いした。どれも虫の絵が細密画のように生々しい。アリはまだしも、ゴキブリやクモまでは…。仕留めようとしたゴキブリが飛んで向かってきた恐怖体験の記憶がよみがえる。

 考えてみると、虫だけではない。米国では善しあしは別として、あらゆる描写が日本と比べて露骨。いろんな意味で、だ。

 ひざ痛治療の新聞広告には切開した患部の画像が載っており、子どもに「新聞を読め」と言うのがはばかられる。弁護士事務所の屋外広告は「ケガしたの?」という文言とともに弁護士とおぼしき男性2人が満面の笑みを浮かべるデザインで、むしろ逆効果ではと心配になる。

 ひとまずアリ退治の役割を果たしてくれた殺虫剤には、目を背けたくなる絵とは対照的な小さな字で「子どもの手の届かない場所で保管を」との注意書きがあった。言われるまでもない。二度と使わずに済むことを願いつつ、大人の目にも触れない場所に片づけた。 (赤川肇)