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ウズベキスタン・カムチク 車窓楽しめない路線

2018年08月22日

 ウズベキスタンの東部フェルガナ盆地の都市アンディジャンへ向かう列車が、山岳地帯にさしかかる。窓から外を眺めていると、車掌の女性にすごいけんまくでしかられた。「ここでは窓のブラインドを閉めるの」

 なぜ怒ってるのか。ついさっきまで一緒に談笑していた周囲のウズベク人乗客も、厳しい視線をこちらに向けている。

 山岳地帯は盆地に入る前に通過する。その入り口カムチク峠のトンネルの手前で列車が止まった。そこはタジキスタンとの国境に近く、検問の兵士が乗りこんできて、一瞬ただならぬ雰囲気に包まれた。

 山岳地帯では無国籍のイスラム過激派が発砲するなど、騒動を起こす。盆地に出ると、乗客が中が見えないようにしていたブラインドを上げた。聞くと「もう大きい『石』は飛んでこないからね」と笑った。

 開放路線を掲げる現政権の下で、日本人観光客のビザが不要となり、ウズベクへの直行チャーター便はキャンセル待ちが出ているほど。だが、国境が引かれている山岳地帯での緊張感がなくなったわけではない。「投石攻撃」への備えにそれを実感した。 (原誠司)