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モスクワ 「史上最弱」が英雄に

2018年08月29日

 PK戦でクロアチアの最後の選手が決めて、開催国ロシアの準決勝進出の夢はついえた。モスクワ市内のサッカーワールドカップ(W杯)街頭中継会場。それでも、悲嘆に暮れたり、怒りをぶちまけたりするロシア人はおらず、「よくやった」とコールを繰り返した。

 強豪スペインを相手にPK戦で下した前の試合は劇的な結果だったが、守備に偏った戦術が退屈な印象も与えた。しかし、この日は攻め込む場面も多く、延長後半で追いつく粘り。選手が全力を尽くしたことは観客にも伝わったのだと思う。

 開幕前の期待は低く、「史上最弱」だったチームの呼び名は「英雄」に変わった。ユニホーム姿で統一した他国からの観戦客にくらべ、ロシア人は私服がほとんど。「にわか」な盛り上がりは否めないが、幸福そうな表情をみると、細かいことはまあいいか、という気がした。

 帰りの地下鉄でも、耳をつんざくロシア民謡「カチューシャ」の大合唱。「日本もいい試合をしたよね」とロシア人に言われると、うれしい半面、やっぱり悔しい。4年後は日本代表にも、ベスト8の光景を見せてほしい。 (栗田晃)