2018年08月31日
過激派組織「イスラム国」(IS)の支配から解放されたイラク北部モスルで、取材の合間に話題となるのはサッカーワールドカップ(W杯)。私が日本人だと分かると、日本代表のベルギー戦は「素晴らしい試合だった」とたたえてくれた。
当地で人気なのはスペインやイングランド代表。衛星放送で流れる海外リーグの影響力は絶大だ。
「中東では?」と尋ねると、エジプトを推す声が目立った。両隣のイランとサウジアラビアは「絶対に応援しない」と眉をひそめる人も。IS掃討作戦を通じて存在感の増す隣国イランは毛嫌いされ、サウジはイスラム過激派の温床とみなされる。
イラクは今年3月、国際サッカー連盟(FIFA)が1990年のクウェート侵攻以来禁止した母国での国際試合開催が解禁された。代表チームの愛称は「メソポタミアのライオン」。93年に日本代表がW杯出場を逃した「ドーハの悲劇」の相手として知られる。
いまだ戦闘の傷痕はあちこちに残るモスルだが、郊外に真新しいフットサル場も見つけた。「4年後は日本と一緒に出場しよう」。市民らにそう言って握手した。 (奥田哲平)