2018年08月30日
取材で中国広東省の汕頭(スワトウ)を訪れ、空港からタクシーに乗って5分ほどしたころ、男性運転手が道端に車を止めた。近くの別の車を指さし、「あっちに乗り換えてもらえませんか?」と聞いてくる。その車は自家用車。運転席から女性が出てきた。
案内され乗り換え、ピンときた。白タクだ。タクシーの夫が空港で客をつかまえ、白タクの妻に引き継ぐ。夫は空いたタクシーで空港に客を拾いに行く。
タクシーよりも乗り心地がずっといい。女性らしく運転もやさしい。39歳という「運転手」の陳さんは、15歳の息子を頭に3人の子持ち。双方の両親の面倒も見ている。毎日、夫と12時間以上働く。家族と晩ご飯を食べるのはたまにだけ。
「大変ではないですか」と聞くと「何年かたてば、きっと楽になるよ」と底抜けに明るい。土産に果物を買おうと露店で止まってもらったら、値引き交渉までしてくれた。
当局は配車サービスを偽った白タクなどへの注意を呼び掛けている。白タクは日常的とはいえ、市民の目は厳しくなりつつある。陳さんみたいな働き者は正規の運転手として働かせてあげたいものだ。 (浅井正智)