【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. アジア
  5. タイ・チェンライ 救出劇が残したもの

タイ・チェンライ 救出劇が残したもの

2018年09月07日

 「ドローン(小型無人機)を飛ばすことは禁止している。少年らを病院に搬送するヘリコプターの飛行の妨げになるのでやめてほしい」

 タイ北部チェンライ郊外のタムルアン洞窟近くの取材拠点で当局者が記者会見中、語気を強めた。7月8日に少年ら13人の救出作戦を開始後、ドローン3機が周辺を飛行していたことが判明したという。地元メディアが謝罪に追い込まれた。

 13人の救出劇は世界の注目を集め、洞窟や病院周辺に集結した国内外のメディア関係者は1000人以上とされる。各社の取材は終始、過熱気味だった。

 作戦初日に救助されたのは少年4人だったが、複数のメディアが「6人救助」と誤って報道した。当局が周辺の立ち入りを厳しく規制したため、各社は関係筋からの情報やヘリ、救急車の動きを基に速報し、誤報が生まれたとみられる。

 さらに当局者が「特別な装置を使って警察無線を傍受し、速報を伝えているメディアもあるようだが、やめてほしい」と呼び掛ける場面も。13人は無事救助されたが、メディアの取材のあり方に一石を投じる事故となった。(山上隆之)