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北京 中国映画実力と計算

2018年09月14日

 北京で7月6日に封切られた中国映画「我不是薬神(俺は薬の神じゃない)」が話題だ。

 家賃も払えないアダルトグッズ店主が、警察に追われながらインドからジェネリック薬を密輸入して稼ぐものの、白血病の友の死をきっかけに高い薬価に苦しむ患者向けに安く販売する物語。「金か法か情か義か」

 スピード感あふれる社会派悲喜劇に途中から号泣した。制作費130億円をかけたものの3日で打ち切りになった「阿修羅」のような駄作だけではない、中国映画の実力を感じた。

 数年前、中国で起きた実話に基づく。偽薬販売で逮捕された男性には減刑嘆願が集まり、法改正や製薬会社への規制が動きだすきっかけになった。

 当然、この映画も検閲を経て上映されている。警察批判は封印し、製薬会社を悪者にしながら「貧困」という治しにくい社会の病を描く。

 上映禁止で投資が回収できなくなるのを避けるため「綿密な計算で作られているんだ」と映画製作会社の友人。エンドロールには「2018年、輸入抗がん剤は関税ゼロになった」と敏感な問題をめぐる最新政策も盛り込まれていた。 (安藤淳)