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ニューヨーク 背後に迫った銃社会

2018年10月18日

 日常生活で銃声のような音に出くわすことはあるが、銃声そのものだった試しはない。だから家族が「夜中に銃声みたいな音がしなかった?」と話題にしても、気に留めなかった。しかし、それは本物だった。

 8月中旬、ニューヨーク・マンハッタンの超高層アパートに2度にわたって銃弾が撃ち込まれた。自宅アパートの裏から発射されたらしく、テレビ局の中継車や警察車両が列をなし、捜査員が訪ねてきたりと物々しい雰囲気に。窓から10メートル先に発砲現場、300メートル先に窓が2枚破損したアパートが見渡せる。

 ニューヨーク市警によると、発砲事件は昨年789件と1993年の5269件から85%減。米国の主要都市としては人口比で少ないが、1日平均2件以上だ。

 1週間後に出頭した容疑者は近所の男(22)。地元メディアによると、犯行動機は不明だが、自分のフェイスブックにこう書いていた。「この夏はつまらない。誰か撃ってやる」

 誰もが標的になり得る銃社会の闇が広がる。そこで暮らす現実を改めて突きつけられ、背筋が寒い。もし銃口がこちらに向けられていたなら、と。 (赤川肇)