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パリ 旅の目的に異変あり

2018年10月20日

 世界中から観光客の訪れるフランス・パリのエッフェル塔で今夏、職員が労働環境の改善を求めてストライキに踏み切った。観光シーズン真っ盛り。日本人旅行者に話を聞こうと思い、入り口を訪れて途方に暮れた。

 入場待ちのアジア系旅行者から聞こえてくるのは、中国語や韓国語ばかり。「ここ数年、日本人のお客さんが激減しているんですよ。どうしてですか?」。職員労組代表ババソーリさんの言う意味がわかった。

 ところが仏経済省の資料によると、年間70万人前後という日本人旅行者は決して減っていない。2015年のパリ同時多発テロの影響で翌年は前年比39.7%減の41万人になったが、17年には年初から平年並みの勢いを取り戻した。

 思えば、シャンパンで知られる北部の街ランスを訪れた時、多くの日本人を目にした。写真投稿サイトで公開する写真に関して「インスタ映え」なる言葉が定着する昨今。旅先が変わりつつあるのだろうか。

 「エッフェル塔? ただの鉄塔じゃん」。訪れたことがないというパリ在住の日本人知己の言葉を、ババソーリさんには言えないでいる。 (竹田佳彦)