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ソウル 用意周到過ぎる即興

2018年10月28日

 平壌(ピョンヤン)入り後に決めた割には、用意が良すぎるのでは? 文在寅(ムンジェイン)大統領が南北首脳会談のため訪れた北朝鮮で、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長とともに白頭山(ペクトゥサン)に登った。この時、韓国側参加者は9月にもかかわらず、ほぼ全員がコートを着用していたのだ。

 白頭山訪問は正恩氏が「サプライズ提案」して実現。大統領の服装は多様な種類を常備し、随行員のコート500着は韓国から空輸した-。これが韓国政府の説明だ。

 だが大統領夫人の華やかなコートとストールや、随行員のコートが南北協力を象徴する開城工業団地で生産するブランドの品だったのを見るにつけ、違和感を拭えなかった。

 韓国の経済紙「マネートゥデイ」(電子版)も同様の疑問を抱いたらしい。コートの他、韓国側が済州島(チェジュド)の水を現場に持ち込んでいたことや、警備上の難しさを挙げ「即興で白頭山まで日程を拡大した、という説明は説得力が足りない」と報じた。

 「過度な演出」に見える余地を残したことは確かだ。事前に決まっていたとしても、何の問題もない。両首脳が白頭山に登った事実だけで意義はあると思うのだが。 (上野実輝彦)