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上海 現金が引き出せない

2018年11月08日

 上海市内の中国銀行支店で、日本円建てで入金してあるお金を引き出そうとしたところ、女性行員に「外貨の年間引き出し限度額2万ドル(約226万円)相当をすでに超えている」と言われた。外貨の両替に5万ドル相当の年間限度額があるのは知っている。だが、引き出し限度があるとは知らなかった。

 今年から始まった規則だという。外貨を大量に国外に持ち出そうとする腐敗役人の動きを封じるのが目的のようだ。「困ったなぁ」と私が言うと、「中国ではどのみち日本円は使えないのだから、現金などいらないじゃないですか」と行員。余計なお世話である。

 裏事情に詳しい中国人は「外貨の引き出し制限があっても、腐敗役人は闇両替で外貨に換えているから、そんなルールは無意味だ。両替の金額はむしろ増えている」と言う。

 外貨は国外への持ち出し制限があり、彼は腐敗役人がそれをかいくぐる方法も教えてくれたが、いささか真偽不明の話なので、ここでは書かない。いずれにせよ、こうした規制で迷惑するのは、当の標的より何も関係ない一般の利用客と思われてならない。 (浅井正智)