2018年11月24日
焦げたような臭いがバス内に漂った。乗客の1人が窓を開けたり閉めたり。次の停留所が近づくころ、その臭いのもとがバスの下部から発生する白煙のせいだと乗客全員が気付いた。
ソウルから北に延びる地下鉄の終点近い駅から、さらに北へと漣川(ヨンチョン)郡を通り抜ける路線バス。停留所に着くや一斉に降り始めた乗客に、車体を点検した運転士が何か話し、降りた人たちが戻ってきた。
立ち上がった私も「一時的なものか」と席に。だが、その後もバスはモクモクと煙を吐き出しながら田舎道を走り続けた。
ソウルでは見かけない古い車両。整備不良はよくあるのか、原因を知らないはずの乗客は平気な様子だ。運転士はハンドルを操りながらスマホで「今は大丈夫だから」と話している。取材時間に遅れないようバスを降りることもできず、50分近く不安な時間を過ごした。
何とか無事に終点に到着。ホッとしつつ降りて驚いたのは、そんなバスでも、交通カードで地下鉄からの乗り換え割引が適用されたことだった。ハイテクな整備不良バス。こんなアンバランスが、この国の魅力であるように思われる。 (境田未緒)