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トルコ・イスタンブール 世界の取材陣が集結

2018年11月29日

 トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館。夜遅くまで陣取った報道陣は100人近くいただろうか。サウジ人著名記者ジャマル・カショギ氏の殺害疑惑事件の現場で耳にしたのはトルコ語に英語、アラビア語、日本語、中国語、ロシア語…。これほど世界各国のメディアが集まるのを初めて目にした。

 スパイ小説のように工作チームが暗躍、在外公館での殺害疑惑という前代未聞の事件報道は過熱の一方だが、それぞれの事情も垣間見える。

 総領事館前の小さな公園で最も眺めの良い場所にテントを張ったのは、カタール資本の衛星放送アルジャジーラ。昨年6月にサウジが国交断絶した際、名指しで閉鎖を求められた。記者は「サウジが殺したに決まっている」と、どこか弾んでいる。

 地元トルコの記者は「今回は政府からの指示がない」と明かした。メディア弾圧が強まるエルドアン政権下で、気兼ねなく報道できるのは珍しいそうだ。

 事件の前「最後のコラム」で、アラブ世界に報道の自由が必要だと書いていた。カショギ氏が亡くなった総領事館前で、その言葉が身に染みた夜だった。 (奥田哲平)