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ワシントン 伝説の記者語る基本

2018年12月06日

 首都ワシントンで開かれた著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏(75)の講演会に行った。同氏はニクソン大統領を退陣に追い込んだ米紙ワシントン・ポストの「ウォーターゲート事件」報道を手掛け、今なお現役。トランプ政権の内幕を描く「フィアー(恐怖)」出版に合わせたイベントだった。

 愛嬌(あいきょう)ある語り口は好々爺(こうこうや)そのもの。ニューヨーク・タイムズ紙の若手記者(35)との対論形式だったため、「私の本よりタイムズを読んだ方がいい」と軽口を飛ばしたり、会場の中学生からの「どうすれば伝説の記者になれますか」との質問に「タイムズでインターン(職業体験)をしよう」と応じるなど、聴衆の笑いは絶えなかった。

 仕事への信念を問われて「自分が真実だと思った素材を相手が強く否定したとき、そこに真実があるものだ」。裏付けを取るために複数のソースを直接取材し、肉声やメモなど現物の記録を得る努力を重ねる。

 「彼らのドアの前に立つことだ。メールや仮想世界のやりとりから外に出ること」。伝説の記者はいつの時代も変わらない記者の基本を静かに語った。 (石川智規)