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バンコク かつらが生む深い絆

2018年12月21日

 バンコクのチャオプラヤ川沿いに10日に開業した百貨店「サイアム高島屋」内に、総合毛髪大手のアデランスが出店した。バンコクを訪れていた津村佳宏社長を取材したら「タイとの絆の強さを感じています」とうれしそうだった。

 アデランスは1986年に初の海外工場をタイに設立。現在は2つの工場があり、日本やアジア、欧米向けに女性用ウィッグ(かつら)を生産している。

 97年にはバンコク中心部に販売店も設けたが、政情不安などにより2010年に撤退していた。「経済成長を続けるタイでは今後、ウィッグの需要が高まる」と津村社長。8年ぶりの再出店に踏み切ったという。

 2つの工場で働く計850人のタイ人従業員が品質の高さを支えており、同社製品の半数近くをタイ製が占めるほどになった。がん治療に伴う脱毛に悩んでいるタイ人患者へのウィッグ寄贈活動も続けている。

 「従業員にとっても、生産だけでなく、母国での販売が新たなやりがいとなっています。社会貢献にもつながることでしょう」。津村社長の説明は好循環が生まれることへの確信をうかがわせていた。 (山上隆之)