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米ミネアポリス 難民を選んだ有権者

2018年12月20日

 独特の旋律が耳から離れない。米中間選挙でイスラム教徒女性初の下院議員に選ばれたイルハン・オマルさん(37)の祝勝会で、出身国ソマリアの音楽が流れ、オマルさんも同郷の人らと軽快な踊りを披露した。

 ソマリア系住民の集住都市でもある中西部ミネソタ州ミネアポリス。祝勝会の数時間前、市中心部の投票所には小雪が舞う中、ヒジャブ姿の女性が絶え間なく出入りしていた。普段、住民らが英語を学んだり、職業訓練を受けたりする公民館だ。

 米国在住が14年というソマリア出身の女性(49)に声を掛けた。「あまり英語を話せないので」と言葉少なだったが、「テロ対策」の名の下にソマリアを含むイスラム圏の国々からの入国を制限したトランプ政権への思いを聞くと、怒りとオマルさんへの期待を語り始めた。

 得票率78%で圧勝したオマルさんだが、選挙区の黒人割合は2割にすぎず、7割は白人だ。祝勝会には白人支持者も多く、オマルさんはこう言った。「政権がソマリア人らの入国を制限する中、有権者はソマリア難民を連邦議会に送る。面白いメッセージだわ」。民主主義の底力を見た気がした。 (赤川肇)