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中国・黄岡 味染みた豚肉スープ

2019年01月28日

 山裾にある農家の一室で話を聴いていると、豚肉のぶつ切りと長イモの具をてんこ盛りにしたスープを勧められた。「私が育てたブタの肉ですよ」。体を壊した夫の横で、ずっと泣いていた妻は少しだけ誇らしそうに何度もよそってくれた。

 少し硬めの肉はかむほどに味が出てきて、ほくほくの長イモと相性がいい。ショウガと塩味だけのシンプルなスープをすすると、すっかり温かくなった。

 土間の室内には、かまどとテーブル、食器棚が置かれ、片隅にまきが積まれている。「この辺りは湖北省でもかなり貧しい」という言葉に納得がいく。妻も体が丈夫ではなく、夫婦は子どもの学費や食費の心配ばかり口にした。ものがあふれた北京とは別の国のように感じる。

 中国農業農村省によると、2600万戸の零細養豚業者がいる。10数匹を育てる夫婦もそのひとつ。しかし同省でもアフリカ豚(とん)コレラの感染が確認され、地域の中心都市・黄岡から夫婦の家までの道中には車両を消毒する検問所がいくつもあった。

 1匹でも感染すれば殺処分で、貧困が深まる。「早く収まって」。夫婦は祈るように言った。 (中沢穣)

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