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上海 「三通」から10年経て

2019年02月07日

 「定年まで大陸で働きたい。台湾にいるよりチャンスが大きいからね」。上海のレストランで料理長を務める標さん(43)は自分の選択が正しかったと自信を持っている。台湾・台南市出身。12年前から中国で働く。

 中国は今年、改革開放政策の導入から40年だが、中台間の交流の歴史は、それほど長くない。2008年12月15日に通商、通航、通郵の「三通」が全面的に解禁され、ようやく交流が本格化した。

 ちょうど10年がたち、中台関係は壁に突き当たっている。台湾で民進党政権が誕生したのがきっかけだ。「民進党は政治にばかり関心を向け、経済はおざなり。台湾は大陸に遅れてしまった」と憤まんやる方ない。

 台湾の苦境は、中国の強圧的な政策で台湾が国際的な孤立に追い込まれている結果でもあるのだが、中国で商売をしている標さんのような人は、どうしてもこう考えるのだろう。

 民進党は先月の統一地方選で大敗した。「再来年の総統選では、台湾に帰って国民党の候補に投票する」。中国で稼ぎたい台湾人の気持ちにも沿わなければ、民進党の政権維持は難しいと実感した。 (浅井正智)