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マニラ 主がいなくなった机

2019年03月07日

 昨年12月中旬に訪れたマニラ。フィリピンの街の年の瀬は美しい。キリスト教徒が9割を占める国の首都は、クリスマスのイルミネーションやツリーで彩られ、キリスト降誕を描いた像をあちこちで目にした。

 大統領官邸の担当記者室に行った。華やかなツリーが飾られており、夕刻にクリスマスパーティーが開かれる日だった。目玉の1つはカラオケ大会。カラオケセットは朝から準備済み。待ち切れず、ランチタイムに練習を始める記者もいた。

 カラオケが家庭にまで浸透しているお国柄だけに、記者たちもうまい。スティービー・ワンダーを高音で歌い上げていた。

 一見お祝いムードの部屋でニュースサイト「ラップラー」の机を見つけた。主(あるじ)はいない。強権的なドゥテルテ政権を批判する同社は昨年2月以降、官邸への出入りを拒まれ、脱税などの疑いをかけられている。他社の記者に聞くと「自分たちにも起こり得る」と顔を曇らせた。

 政権はカラオケに寛容なようだったが「報道の自由」に向き合う姿勢はどうか。記者室を後にしながら、次のクリスマス、あの机には誰が座っているのだろうかと思った。 (北川成史)

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