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ヤンゴン 国を傷つけるのは誰

2019年03月15日

 1月、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害の取材を巡り、国家機密法違反罪に問われたロイター通信の同国人記者2人の控訴審判決がヤンゴンであった。裁判官は禁錮7年の一審判決を支持し、記者の控訴を棄却した。

 翌日、裁判所周辺で市民の反応を集めた。インターネット上で「国に損害を与えた」と、国軍の迫害を暴いた記者らが攻撃されているのを見たからだ。

 「民主主義の国なら表現の自由が保障されるべきだ。公正な判決ではない」と一人目の30代男性。記者側に立った。

 17人に尋ねたが、予想ほど記者への反感が出てこない。

 「真実でも国のイメージを傷つけるなら、記事を書く前に熟慮すべきだ」との厳しい意見は40代女性一人だけ、残りは記者擁護か「事件を知らない」。70代男性は「一部の過激な人間が中傷を拡散している」とネット時代の特性に目を向けた。

 記者らの逮捕には謀略の疑いが残り、国際社会にミャンマー政府への批判が広がる。国内でも少なからぬ人が疑念を抱く。判決は記者らが国益を害したとする。だが、本当に傷つけたのは誰なのか。 (北川成史)