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韓国・束草 長すぎた分断の結果

2019年04月17日

 期待する言葉が聞けるものだと思っていた。韓国東部、海沿いの町の束草(ソクチョ)。朝鮮戦争時に北朝鮮から避難したまま戻れなくなった「失郷民(シルヒャンミン)」が多く暮らしている。

 2度目の米朝会談を控え、南北融和が進めばまた故郷の地を踏むこともできるのでは。問い掛けにイ・クムスンさん(90)は首を横に振った。

 「どう変わったか見てみたい気持ちはあるけど、今更戻って何をするのさ。置いてきた子どもにだって何と話せばいいか」

 夫と娘2人と束草に逃げてきたのは1950年末、22歳の時。一番下の娘は祖父母に預けた。戦火が収まればすぐに帰れるものだと思っていたから。だが避難生活は続き、その先にあったのは南北分断。残してきた家族との連絡も途絶えた。

 あれから70年が過ぎようとしている。子どもを飢えさせないようにと、その日その日を必死に生きてきた。「もう、故郷はここだよ」

 10歳で北朝鮮を離れた金相浩(キムサンホ)さん(78)も「ここで結婚し、子どもも育てた。一度ぐらいは行ってみたいが帰りたい気持ちはない」と言う。自然に湧く望郷を抱くには、流れた時間はあまりにも長い。 (中村彰宏)

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