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北京 全世界が泣ける日が

2019年04月22日

 中国国産のSF映画「流浪地球」が大ヒットしている。春節(旧正月)に公開され、興行収入は約1週間で20億元(約320億円)を超えた。中国メディアは「中国のSF映画元年が幕開けした」と興奮し、皮肉と強気がおはこの外務省報道官も「ぜひ見て」とほほ笑んだ。

 評判につられて北京の映画館に足を運んだ。幅広い年齢層でほぼ満席の客席からはところどころのユーモアに笑い声。感動で涙ぐむ人もいた。評判通りにコンピューターグラフィックスを駆使した映像は、ハリウッドの大作にも引けを取らない。

 ストーリーもハリウッドっぽい。ハリウッド映画では地球存亡の難局に命懸けで立ち向かうのは米国人(たいていは白人男性)だが、この映画では中国人男性がその役回りを担う。愛国的な色彩は控えめだが、世界を率いる中国への自信がにじむ。東南アジア系の人を見下したかのような表現は少し鼻につく。

 地球を救う中国人の英雄になじみがないせいか、私自身はうまく感情移入できないまま映画館を出たが、迫力の映像は大いに楽しめた。中国のSF超大作で「全世界が泣く」日も近いかもしれない。 (中沢穣)