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上海 子供に席を譲らぬ訳

2019年04月24日

 上海市内の地下鉄で長いすに座っていた私の前に、小学校1年生ぐらいの男の子が立った。車内は満員で席は空いていない。男の子の顔には「席を譲ってよ」と書いてある。

 お年寄りや乳飲み子を抱えた母親ではない。どこから見ても元気そうな子供だ。一緒にいた両親も私に無言の圧力を送ってくる。私が無視していたら、相向かいの席の若い男性が「こっちにおいで」と手招きし、男の子はまんまと席をせしめた。

 こういう光景は、中国では時々見かける。「一人っ子政策の影響で子供を大切にするから」という。席を譲ってあげた男性は、かつて日常的に席を譲られていたに違いない。

 私には原体験がある。小学4年の時、愛知県内のローカル電車で遠足に出掛けた。長いすに座っていたおばあさんが、スペースを少し空けてくれ、私に座るよう促す。喜んで従った。翌日、私は担任の先生にきついおきゅうを据えられた。「子供が席を譲ってもらうなんて、恥ずかしいと思わんのか」

 遊び疲れるほど動き回る子供は、決して社会的弱者などではない。立たせておけばいいのである。 (浅井正智)

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