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米パークランド 日常と厳戒のはざま

2019年05月09日

 ヤシが揺れる常夏の街はあちこちで武装警官が目を光らせていた。米南部フロリダ州パークランドの高校で17人が死亡した昨年2月の銃乱射事件から1年。事件前の日常と再発防止策にどう折り合いを付けるか当事者の思いが印象に残った。

 「誰にも僕たちのような思いをしてほしくない。教室の扉や窓を防弾ガラスにし、出入り口に金属探知機を置けば、すごく役立つ」。いとこ=当時(14)=を失った男児(10)は取材中の私をつかまえ、こう訴えた。

 地元ではこうした対策やトランプ米大統領が推す教職員の「武装化」も検討されているが、どこまで厳戒態勢を敷くべきかは意見が割れる。

 たとえば、かばん。高校は新たな対策の一環として、生徒が校内に持ち込めるかばんを中身が見える透明なリュックサックに限定したが、ほどなく撤回。「プライバシーの侵害」「まるで刑務所」といった抗議の声を知り、納得したつもりでいた。

 しかし同級生を亡くした女子生徒(16)と会い、こうした対策への反対理由にハッとさせられた。「私たちが望むのは、事件の象徴を背負うことではない。普通の生活を取り戻したいから」 (赤川肇)