2019年05月22日
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の米朝再会談は、予想を覆す驚きの結果に終わった。想定外だが、実にトランプ氏らしいと思った。ハノイの国際プレスセンターで原稿を書いていると、地元テレビのディレクターから取材させてほしいと声をかけられた。「締め切りがあるからごめんね」と言っても引き下がらない。「じゃあ5分だけ」と応じた。
彼女からの最初の質問は今回の結果をどう考えるかだった。「非核化の問題が2日間で解決できるわけがない。今回の結果は妥当ではないか」
こう答えると彼女は悲しげな表情で問い掛けた。「合意に至らなかったのはベトナムの責任でしょうか?」。思いがけない質問に驚きつつ、「違う。あなたたちは素晴らしい場を提供した」と励ましたが、どう答えても合点がいかなそうだった。
ベトナム政府は「平和の中心に」という標語を掲げ、会談に注力してきた。北朝鮮が目指すべき先行モデルとの自負もあったと思う。失意はいかほどだったか。「米朝再会談、事実上の決裂」。紙面の見出しにはそう刻まれたが、主催国の思いは単純ではなかった。 (石川智規)