2019年05月27日
外国人があまり訪れない地域で取材を申し込むと、こちらの意図しない方向に話が進んでいることがある。旧ソ連、東欧モルドバの首都キシニョフを訪れたときもそうだった。
現地の景気やビジネスの状況を聞きたい、と面会を約束していた経済団体を訪れると、円卓で6人に取り囲まれ、「日本からわざわざ訪ねてくれた」と紹介された。ロシアの地方でも経験したことがあるが、要は取材というより現地視察の扱いだ。
建設や医療、会計など各分野の担当者が集まり、「日本のような公正で誠実な国の投資を望んでいる」「中国に負けないように、日本企業の進出を期待している」などと順に発言。だんだんと陳情を受けているような気分になった。
旧ソ連からの独立後、経済発展が思うように進んでいないモルドバ。インフラ整備の遅れや政治体制への不満などについて質問したのだが、「問題ない」「これからどんどん良くなる」などの返答ばかりだった。
良い印象を与えたいという熱意は十分伝わったが、取材という意味では目的が果たせず、閉口したまま事務所を後にした。 (栗田晃)