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イエメン・マーリブ モグモグタイム優先

2019年05月28日

 アラブ社会の風習には慣れたつもりでも、内戦下のイエメンでは面食らうことが多かった。取材に同行するイエメン暫定政権の情報省職員と翌日の計画を話していると、どうも午後に予定を入れるのを渋る。護衛の地元治安部隊が嫌がるという。

 理由は簡単だった。アラビアチャノキという常緑樹の葉「カート」を楽しむためだ。新芽のカートをかみながら出る汁を飲む。かんだ葉は捨てずに片方の頬にためるのが流儀。昼食を終え、頬を膨らませて談笑する光景は社交場でもみられる。

 イエメンでは嗜好(しこう)品だが、隣国サウジアラビアでは覚醒剤として禁じられている。覚醒剤の主成分に似たカチノンという物質が軽い覚醒作用を与えるとされる。食料が不足する人道危機下にあっても、カートを売る市場はにぎわっているらしい。

 戦闘地域前線近くでも、兵士たちは口をモグモグ。覚醒作用は戦闘行為に影響するのかと思ったが、むしろ逆で「カートの時間は銃声がやむ」という。一時休戦のようだ。内心は「それよりも早く内戦を終わらせて」と思ったが、これがイエメンの文化。言葉には出せなかった。 (奥田哲平)

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