2019年06月17日
ニューヨークの地下鉄では朝夕、かなり混み合っていても、東京の満員電車のような「ぎゅうぎゅう詰め」状態を経験したことがない。車内空間にまだ余裕があるように見えるが、列車はプラットホームに多くの客を残して出発していく。
日本から赴任して間もないころ、扉付近にようやく一人分のスペースを見つけて乗り込もうとしたら、「もう不可能よ」と車内の女性客に拒まれた。何だか人格まで否定されたようで後味が悪かったのを覚えている。
実際、混み合った電車やバスでは、詰める、詰めないの口論や身体的接触をめぐる言い争いが日常茶飯事だ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ニューヨークの地下鉄の主要犯罪は1990年から86%減少。しかし、かつて代表的な危険箇所の一つだった歴史を考えれば、他人との距離感や警戒心が日本と違うのは分かる気もするのだが…。
混雑時に一番強烈だったのがこれ。ある朝、地下鉄が揺れ、筆者の近くにいた女性が隣の中年女性にぶつかった。「私はあなたの手すりではない」。ムッとした表情で中年女性が発したひと言は、冗談だったのか本気だったのか。 (赤川肇)