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ロサンゼルス うまさより、ぬるさ

2019年06月25日

 「え? 熱くない」。味は同じでおいしいが、肉汁の温度が低かった。少し前になるが、自宅近くに有名な小籠包の店が開店。台北が本店で長蛇の列ができる人気店だ。世界展開しており、筆者は台北と香港、東京で食べたことがあったが、ようやく地元の店を試す機会を得た。

 小籠包をかむと汁が出て、エビ、豚肉、トリュフなどの味がぱっと広がる。いつもは結構、熱い。今回、ぬるい肉汁が口内に広がった時、あるファストフード店が客から「コーヒーを膝にこぼしてやけどした」と訴えられ、数千万円の和解金を払った事件を思い出した。少しでも熱いとき、事前警告が必要だ。

 別の日本の乳製品企業のケースもある。真空パック入り豆腐の販売で成功していたが、試食で熱いみそ汁に入れて出したら、やはりやけどで訴えられた。形勢悪く米国市場撤退寸前まで追い詰められたが、たまたま健康的だとして豆腐を支持したヒラリー・クリントン元国務長官に救われた形になり、何とか米国市場を維持した。

 「熱い」「辛い」が苦手な米国人。舌の文化が違う訴訟社会でのビジネスは気配りが大変だ。 (野口修司)