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ニューヨーク 下町の憤りと諦めと

2019年11月06日

 「憤っていた」と記事に書いた。この表現が的確だったのかどうか、いまだに迷っている。

 ニューヨーク市スタテン島で5年前、たばこを不法販売していたとされる黒人男性エリック・ガーナーさん=当時(43)=が逮捕に抵抗し、白人警官(34)に首を絞められて死亡した事件。連邦当局が警官を訴追しないと発表した7月、当時の現場に足を運んだ。古びた長屋に理容店や食堂が並び、有色人種の人たちが行き交う下町。「憤っていた」のはそこの住人らだ。

 ガーナーさんは丸腰で、首絞め行為は市警の内規で禁止されていた。米メディアによると、訴追を主張する意見が当局内部にもあった。しかし警官の故意を立証するには「証拠不十分」が結論。誰ひとりとして刑事責任を問われない幕引きだった。

 顔見知りだった露天商ダグ・ブリンソンさん(67)は「エリックが死んだのは黒人だから。だから、あなたたちも注目している」。配送会社員(39)は「黒人には正義も何もない」と口にした。2人とも、語勢を強めるわけでもなく、遠くを見るような目で、淡々と。憤りだけではない。諦めが入り交じった様子が頭から離れない。 (赤川肇)

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