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ワシントン 外交官の静かな抵抗

2019年11月11日

 旧知の米外交官と久しぶりに再会した。話が7月4日の独立記念日の式典に及ぶと、真剣な表情で「トランプ大統領が演説すると聞いて、いたたまれなくなり、その日は国立公文書館に行ってきた」と明かした。

 実際、あの式典はお粗末だった。独立記念日は元来、国民が建国の理念を思い起こすとされる祝日。大統領が式典に姿を見せればそれだけで政治色が強まる。演説すればなおさらだ。演説はふだんの党派的な内容は控えたものの、共和党の大口寄付者にVIP席がしっかり用意されていた。航空機がまだ発明されていない18世紀の独立戦争で「独立軍は空港を制圧した」などと事実誤認も相次いだ。

 外交官は「公文書館の展示は多様性を重視している」とも語った。あらためて訪ねると合点がいった。独立宣言、合衆国憲法と権利章典(憲法修正条項)の原本は、権力は縛られるべきものだということを強く訴えかけている。黒人の差別撤廃や女性参政権確立に向けた歴史とともに、19世紀の中国人排斥法など負の遺産も展示されている。排外的な米国第一主義に静かに抵抗する外交官の姿は頼もしかった。 (岩田仲弘)

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