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ビシケク 汚職疑惑に徹底抗戦

2019年11月13日

 1カ月半前、にこやかに取材を受けた彼は、死者も出る治安当局との激しい銃撃戦の末、投降した。旧ソ連中央アジア・キルギスのアタムバエフ前大統領。後任のジェエンベコフ大統領と対立し、抵抗したが、汚職容疑で8月初旬、拘束された。

 キルギスの首都ビシケクで行ったインタビューでは、日本文化の愛好者であると強調し、「日本は世界で最も偉大な国の1つだ」と笑った。

 取材テーマは国内政治がメインではなかったが、端々で2017年まで6年間務めた大統領時代の実績を自画自賛。「いまの大統領は民主主義ではなく、個人の利益を優先している」と現政権を批判した。

 当時はまだ訴追の可能性は高くなかったが、危機を察知し、自らの正当性を外国メディアにアピールしておきたかったのかもしれない。

 喜怒哀楽を表に出す激情型の政治家は、自らに対する複数の汚職容疑を「政治的陰謀」と否定し、事情聴取の要請さえ拒否。自宅に立てこもり、最後まで抵抗した。有罪となれば終身刑の可能性もあるという。取材の際、「恥より死を選ぶサムライの精神」をたたえていたことを思い出した。 (栗田晃)