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イタリア・アリアーノ 今こそ思いはせる場

2019年12月11日

 文学作品の舞台となった土地の自然や文化、伝統などを体験してもらう「文学公園」の創設に尽力する友人に勧められ、南イタリアのバジリカータ州アリアーノ村を訪れた。土壌が風雨で浸食された「涸(か)れ谷」にある人口1000人弱の村。知られるようになったのは、医師で画家兼作家のカルロ・レービ(1902~75年)が第二次大戦直後に発表したルポのおかげだ。

 反ファシズム運動に参加し、35年に政治犯として「流刑」先の未開の寒村に送られたレービの著作名は「キリストはエボリに止りぬ」。エボリはローマから南に車で3時間の人口4万人の市。大都市トリノ出身のレービは、キリスト教文明が波及しなかったかのようなエボリ以南の苛烈な現実に驚く。呪術や神話が息づく村の生活を透徹した視点で描き、著作はベストセラーに。

 98年以降、文学公園のひとつとして年間5000人超が村を訪れる。反ファシズム闘士の住まいや月夜の幻想的な涸れ谷を見ながら、近年「復活」するかのようなファシズムや、環境保護と開発の調和、南北格差に思いをはせるには、格好の場かもしれない。 (佐藤康夫)

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