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香港 「天に唾する」結果に

2019年12月20日

 「紅顔禍港(美人が香港にわざわいをもたらす)」。中国の官製メディアにこう言わしめた香港の民主派リーダー、周庭(アグネス・チョウ)氏(22)は取材の待ち合わせ場所に現れると、日本のアニメで覚えたという流ちょうな日本語で「よろしくお願いします」と頭を下げた。

 2014年に香港で民主化を求めた雨傘運動の「女神」とも称され、日本のメディアではなじみの存在だろう。テレビに映るとおりの容姿端麗ぶり。複数回の拘束に屈せず、香港で自由が奪われていくことへの危機感を語る姿には説得力がある。一方で「日本の食事はおいしいけど、量が少ないですよねえ」とリゾットを食べる様子は同年代の普通の女性と変わらない。

 冒頭の官製メディアは周氏を激しくののしる。「純粋さを装ってかわい子ぶるが、(内面は)暴力的で脳みそがなく、外国にこびている」。デモ参加者が「暴徒」だというイメージを広めたい中国政府にとって、周氏の存在は邪魔でしかない。口汚い罵倒は、「女神」に対する恐れの裏返しともいえる。なりふり構わぬ世論工作が、逆に中国政府のイメージを傷つけていると感じる。 (中沢穣)