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ニューヨーク 3000人への思い今も

2019年12月26日

 花、詩、家族写真、葉巻、チョコレート菓子…。米中枢同時テロから18年を迎えた11日、旅客機の衝突で崩壊した米ニューヨークの世界貿易センターの跡地にある慰霊碑には、その名を刻まれた約3000人の犠牲者それぞれをしのばせる品々が手向けられていた。

 21歳で亡くなったポーランド出身の男性には、ハート形の色紙とともに「おじさん、あなたに会えたらいいのに」と直筆の言葉が添えられた。43歳だった女性には「2人のおばあちゃん!」と幼子の写真が飾られ、別の女性=当時(50)=には、幼なじみが「一生あなたを忘れない。でも、過去に戻れたらいいのに」と手紙を置いた。

 9歳で父親を亡くした男性(27)は、慰霊碑に刻まれた父親を人さし指で繰り返しさすりながら、10分以上立ち尽くしていた。最愛の人の名前に口づけして涙をぬぐう姿も。

 日本にいた18年前、旅客機がセンターに突っ込むのをテレビで見て、言葉を失った記憶がある。が、その犠牲者や家族にまで思いをはせることはなかった。この地で遺族らの思いに直接触れ、自分が涙もろいことを初めて自覚した。 (赤川肇)