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香港 「文房具代」の使い道は

2020年03月16日

 香港中文大学で警官隊と学生たちが激しく衝突した翌日、大学に取材に行こうとしたら、電車もバスもすべて運休。大学に人を近づけさせない当局の意図は見え見えだ。タクシーでも行けるが、現場で放したら戻って来られなくなる心配があったので、人づてで車をチャーターした。

 乗ってすぐ、香港人の運転手にチャーター代を尋ねると「車代はいりません」と驚くことを言う。「子どもたちに文房具代をいただければ」と。教育熱心なお父さんなんだなと思いきや、通訳の香港人がそっと教えてくれた。「文房具代は抗議活動参加者への寄付という意味です」

 ちなみにデモを支援する人は「家長」。普通は「保護者」を指す言葉だ。抗議活動をめぐり会員制交流サイト(SNS)上ではこうした隠語が飛び交う。

 大学に着くと、バリケードで封鎖されたキャンパスの外は車で大渋滞だった。その多くが食料や水などの物資を運んで来ていた。これが「文房具」の正体か。運んでいる人たちはみんな「家長」。4時間後、取材から戻って来て運転手から請求された「文房具代」は-。まあ金額は書かないでおこうか。 (浅井正智)