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サンフランシスコ 消えゆく毛皮コート

2020年04月20日

 クリスマスから新年会の季節にかけて、毛皮のコートが登場する機会が多いが、だんだん毛皮の入手が困難になってきている。米サンフランシスコでは今年初めから、動物保護のために毛皮製品の販売が禁止された。ただし、在庫に限って年末まで販売可能。カリフォルニア州議会は10月、2023年から禁止する州法を成立させた。

 当地の有名デパートなどが集まる地域に毛皮の仕立て直し専門店を訪ねた。夫婦2人の小さな店だが、毛皮のコートが200着は並ぶ。販売禁止の影響を尋ねると、店主は「ないね」。新しい品物が規制され、すでに所有されているものは対象外。毛皮の製品は家族が代々引き継ぐことが多く、なくならないという。

 とはいえ、周辺に約20軒あった販売店は全てなくなった。仕立て直しもこの一軒だけが残る。最近多い注文は、1970年代に流行した怒り肩から最近人気のなで肩への仕立て直しだそうだ。この辺りで毛皮製品を着た人をあまり見ないのは動物保護の影響かと問うと、「ここはあまり寒くないからさ。よその州へ行ってごらん。まだ着ているよ」。 (岡田幹夫)