2020年05月07日
中国遼寧省丹東からは、鴨緑江を隔てて北朝鮮の新義州が見える。場所によっては川幅数100メートルの大きな川だが、30年ぐらい前までは冬には必ず氷結し、歩いて渡れたという。しかし地球温暖化の影響のせいか、最近はめったに凍らなくなった。
町外れの川岸でそんな話を地元の人から聞いていたさなか、川岸から10メートルほどの水面をぷかぷかと泳いでいる男性が見えた。まさか北朝鮮側から泳いできた脱北者かと思ったが、中国側の岸に服などが置いてある。どうやら寒中水泳らしい。有刺鉄線のフェンスはどうやって越えたのだろうか。川岸には監視カメラが等間隔に設置され、国境警備の警察官も多いのだが。
中国では寒中水泳は健康にいいとされ、愛好者は少なくない。きれいとは言いがたい北京市内の川でも、寒中水泳を楽しむ高齢者らの姿をよく見かける。
とはいえ厳重警備の国境の川で泳いでいる姿には驚いた。川面に吹く氷点下の風に凍えながらしばらく見ていたが、男性は誰にもとがめられず、気持ちよさそうに平泳ぎを続けていた。見ている方が寒くなるとはこのことで、北京に戻ったら風邪をひいていた。 (中沢穣)