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北京 香港と本土心の距離

2020年05月11日

 「自由を求める香港人の気持ちは分からなくもない。でもデモとは関係なく、香港は好きではありません」。日本語が堪能な北京市の30代女性中国語講師は、顔をしかめて語った。

 香港情勢について北京の人々に尋ねることがあるが、デモ隊への共感の声はほとんど聞かれない。中国で報じられるニュースが香港当局や中国政府の思惑に沿った内容であることが主な理由だが、デモ以前からある、香港と中国本土の人々の心の距離も影響しているように思う。

 女性が香港嫌いになったのは、数年前の旅行がきっかけ。香港ディズニーランドやホテルの一部の従業員の接客態度に腹が立ったという。「外国人客に比べ中国本土の客を見下したように感じた。試しに日本人のふりをして日本語で話しかけたら、ころっと態度が良くなり、余計に怒りが込み上げた」と話す。

 女性のケースは極端かもしれない。ただ香港で取材すると、中国政府だけではなく、中国本土の人々に対しても快く思わない人が少なくない。そういう気持ちは相手に伝わるものだ。香港人の闘いが中国本土の人々の共感を得るのは、今後も難しいのだろう。 (坪井千隼)