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北京 罪悪感の「カタカタ」

2020年05月21日

 ある日、家に帰ると縦30センチ、横20センチ、高さ15センチほどの段ボール箱が届いていた。ネット通販の荷物だが、こんな大きな物を注文したかな、と首をかしげる。振ってみるとカタカタ、カタカタ。中にはペンが1本入っていた。別の日には、同じサイズの箱が2つ届いていた。今度はパサパサと音。家族が頼んだ海苔(のり)が2種類、別々の箱に入っていた。

 中国のネット通販はとても便利だ。ペン1本から何でもすぐに届く。だが街中の集配所では段ボール箱が飛び交い、扱いは少々荒い。商品が壊れるのを防ぐためか、包装が過剰すぎる。

 少し多めに買い物をすれば、環境によくないという罪悪感とともに大量の段ボール箱をつぶすことになる。まとめて注文しても、違う商品は別々に届くため、やはり箱の数は減らない。

 上海や北京でごみの分別収集が始まるなど中国でも意識は高まっている。しかし便利さを競う新しいサービスは環境問題を忘れがちだ。私も心が痛みつつ、利便性の誘惑に勝てない。わが家の玄関には段ボール箱の解体だけに使うカッターナイフが置かれている。 (中沢穣)