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ロンドン 倹約と健康女王の道

2020年07月15日

 「いったい、いつの時代の電話なんだ!」。新型コロナウイルスで疲弊する英国人が一瞬、コロナより心を奪われたのは、エリザベス女王(93)が使うレトロな電話機だった。

 女王の長男チャールズ皇太子がコロナに感染。直後、感染対策にあたるジョンソン首相を、女王が電話で激励する写真が発表された。ダイヤル式かボタン式か判然としないが、ぼってりとした大きな電話機。上品な普段着姿の女王とこの電話の写真は、まるで1960~70年代の一般家庭のようだった。

 女王の倹約は有名だ。古くなったベッドカバーはクッションカバーに仕立て直し、700部屋以上あるバッキンガム宮殿で、使っているのは6部屋のみ。台所では、1800年代の鍋やフライパンを使っているという。一人で食事をとる時は、野菜を添えた焼き魚と小さなサラダのみで、でんぷん質は控える。

 総資産3億4000万ポンド(約455億円)の女王。欲しいものは何でも手に入るが、自己を律して生きることこそ、長生きと健康の秘訣(ひけつ)とされる。高齢の女王がつましく生きる姿は、コロナと闘う国民の癒やしと勇気になっただろう。(沢田千秋)