2020年07月16日
新型コロナウイルスが猛威を振るい、多数の死者が出ているスペインの首都マドリード郊外のミンゴルビオにある墓地。多くの国民を殺害した独裁者フランコ総統(1892~1975年)の遺体が眠る場所だ。
路線バスで30分。墓地に入ると、すぐ左手の教会入り口に国旗や大きな花輪が見えた。建物内に遺体が安置されている。「批判はあるけど、近代スペインの礎を築いたのは彼」。墓参りに訪れた女性の言葉に、根強い支持者の思いが垣間見えた。
遺体はもともと、約40キロ離れた国立慰霊施設「戦没者の谷」に埋葬されていた。しかし国内のファシストの「聖地」化した面があり、中道左派のサンチェス政権は昨年10月に掘り起こして現在の場所に改葬した。新たな聖地化へ懸念があるが、確かに一部の支持者にとって追憶の場所になっているようだ。
総統が20代だった1918年から世界で流行したスペイン風邪では、2000万人以上が死亡したとされる。没後45年に起きた新たな大流行。外出禁止など私権の制限で対応を迫られているが、泉下の独裁者は何を思うだろうか。
(竹田佳彦)