2020年07月23日

　新型コロナウイルスの影響で外出制限が導入されて以降、ロンドンの自宅近くのスーパー前に並ぶことが日課になった。混雑を避けるための入店制限で、店舗前には頻繁に行列ができる。３０分ほど待って入っても、お目当ての品が売り切れならば別の店でまた並ぶことになり、店内で肩を落とすこともある。

　常連になるにつれ、会計時には、しゃべり掛けてくるレジ係の店員も増えた。店員と客を隔てる透明アクリル板の向こうから「日本も大変な状況になってきたな」などと、私の家族の健康を気遣ってくれる。

　そんな中、アジア系の男性店員には日本の緊急事態宣言の内容や今後の見通し、私の家族がどう対応しているかなどを詳しく聞かれた。日本人と結婚した娘が神奈川県で暮らすが、夫が不在の時は言葉の壁もあって不安に襲われているという。

　私も時々、地元の医療状況をネットで調べつつ、医師らに症状を伝える場合にはどんな表現が適切なのかと考える。異国での有事はやはり不安だ。男性店員は私の後ろに行列が延びたのを見て「アリガトウ」と言って話を終えた。私も男性の娘の健康を願った。　（藤沢有哉）