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上海 綱渡りの渡航無事に

2020年07月24日

 家族が上海に引っ越すにあたり都内の社宅の家財をほぼ搬出し終えた夜、「中国が2日後からビザを取り消す」との速報が流れた。予定していた飛行機では間に合わない。ソファだけが残る部屋で青ざめた妻は慌てて1日早い便を探す。翌朝、5歳の娘と8歳の息子を連れて、満席の飛行機に飛び乗った。

 上海の空港は全旅客への健康調査で混雑し、入国手続きを済ませたのはビザ取り消しとなる2時間半前。続いて行われたPCR検査は、仮に陽性が出れば親子が離れ離れで病院に送られる恐れがある。小雨の中で行われた検査は深夜までかかり、陰性の結果を受けて自宅にたどり着いたのは着陸から15時間後の翌朝8時。ここから14日間の自宅隔離生活に入った。

 スリルを極めた渡航だったが、妻は「上海の人が好きになった」と言う。空港では防護服の検疫官が親切に荷物を運んでくれた。隔離中、毎日検温に来る看護師とは翻訳アプリで対話する中で優しさに触れたという。

 私はといえば、家族と一緒に自宅隔離にならないよう別のホテルに泊まり、電話で励ましただけ。家族の絆の修復も長期戦となりそうだ。 (白山泉)