2020年07月31日
ベルリンで地下鉄に乗ると、割と高い確率で路上生活者(ホームレス)に遭遇する。小銭を恵んでもらおうと紙コップを手に車両を回ってくるのだ。でも、新型コロナウイルスの影響で様子が変わった。
外出制限で地下鉄の乗客が減り、小銭を渡す人は少なくなった。あからさまに彼らを避ける人も時折、見かける。「家で過ごそう」と言われても、彼らには家がない。
地下鉄駅の通路にいた男性(40)は「人出が減って換金できる空き瓶や空き缶も少なくなった」と嘆いていた。通行人にもらうパンや果物で飢えをしのいでいるという。
取材を進めると、一時滞在施設が閉鎖されたり、配食や医療のボランティア活動も縮小されたりしていた。同様に外出制限下にあるパリとロンドンの同僚にも声をかけ、路上生活者の現状を記事にまとめた。
非常時、社会的に弱い立場の人々は置き去りにされがちだ。ベルリン市は路上生活者のために借り上げたユースホステルの部屋を提供し始めたが、数は十分ではない。先日、立ち寄ったら男性は、まだ同じ場所にいた。(近藤晶)